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いわゆるプログラマーのつぶやき

【パン】自家製酵母の種作りのコツ

失敗の連続

自家製酵母のパンを作るべくトライしたが最初の1ヶ月は失敗の連続で、パンとはとても思えないものを作り続けた。その間、書籍を15冊購入し、ネットでも色々と情報を探して実践を繰り返す内に美味しいパンが作れる様になったコツを記載する。

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美味しく焼ける様になった自家製酵母パンの例

自家製酵母パンの主な失敗事例(書籍などを見て作ってもうまく行かないケース)は、

発酵しない(発酵不十分)

酸味が多い

パンが膨らまない

の三つだろう。いずれも酵母の力が弱く過発酵(異種菌発酵)に至るのが原因だ。酵母が弱いのでいつまでも発酵しきれない、そのため酵母菌よりも乳酸菌や酢酸菌などの雑菌の勢力が増して酸っぱいパンになる。肝心の酵母菌が正しく働いていないので炭酸ガスの発生が少なくパンが膨らまない。何度も失敗を繰り返す内にこの理屈が段々わかってきた。

自家製酵母の4段階

自家製酵母パンを一から作るには一週間以上、合計10日ぐらいかかる。以下、必要なプロセスと失敗事例を記載する。

①液種作り

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液種。この状態からまだ二日間発酵が必要

  • 自然の中に存在する酵母菌を増やす作業。果物が熟し過ぎると発酵してアルコール臭がしてくるが、これは果物の糖分を酵母菌が食べて二酸化炭素とアルコールに分解する自然現象である。
  • 例えばワインは葡萄を瓶の中に潰しながら詰めて適温に放置するだけで、葡萄の皮に付着していた酵母菌が働いてワインが出来る(注意:アルコール度数が1%以上になると酒税法違反となるため、これを飲む場合は発酵が進み過ぎない内に微発酵葡萄ジュースとして飲むこと)。ビールも同様である。
  • 基本的に熟した果物であれば大抵のものが利用出来る(パイナップルなどタンパク質分解酵素を持つものを除く)
  • 一番取り扱いが簡単で失敗しにくいのは干し葡萄(レーズン)を用いるやり方
  • ただし購入の際はオイルコーティングされていないものを買うこと。袋の原材料に油がなければOK。
  • 色々とやり方はあるが、煮沸消毒(水を5mmの深さ程度入れて電子レンジ500Wで1分半チンするのが簡単、金属類はNG)した容器に、レーズン100g、水300cc、砂糖(きび糖がオススメ)10g入れてよく混ぜたものを24〜30℃の環境で発酵させる。
  • ここで用いる水の水質に注意。水道水を避け、カルキを除去した清浄水かミネラルウォーターを使うこと。
  • またアルカリイオン水は絶対ダメ。酸性を好む酵母菌がアルカリ環境ではうまく発酵しなくなる
  • 朝と晩に蓋を開けて匂いを確認し、瓶を振って混ぜて再び蓋を開け(酸素を入れる)蓋を閉める。これを繰り返す。
  • 蓋を閉めず軽く載せて空気の入れ替えが出来ると理想的だが、その場合はコバエなど虫に注意。虫が入るぐらいならきちんと蓋を閉めること
  • 数日経つと葡萄が浮かんでくる。蓋を開けるとシュワっと音がして泡立つ状態(写真)から「さらに二日間」発酵させる。ここが重要で、早すぎると液はまだ甘く酵母菌が十分に増えていない液種となり、その後の作業がうまくいかない。

液種作りの失敗事例

  • 発酵不足。しかし液を見ているだけでは分からず次の工程で失敗が発覚する。
  • 発酵不足な場合、液種発酵を再開することで強い酵母に出来る場合もあるが、最初からやり直しがオススメ(次の元種作りで改善出来たか試してみることは可能)
  • 発酵温度の上限は30℃。これを超えると酢酸菌による酸味が出やすい。液種で酸味があるのはかなり問題。

②元種作り

  • 十分に強い液種が出来ればそれでパン作りは可能だが、どうしても出来栄え(液種の中の酵母菌の多さ)にバラつきが生じ、前回作った液種は2時間で発酵したのに今回の液種は7時間経過しても発酵しない、などの困った現象が起きてしまう。
  • そこで次の一次発酵以降のパン作り作業の時間が読める様に、つまり安定して発酵するために元種を作る。
  • この元種作りは小麦粉と水を追加する作業を数回繰り返すが、酵母が小麦粉で発酵する癖をつけることが出来ると説明される方も多い
  • 最初に煮沸消毒した容器(1リットル程度)に、①の液種30g、全粒粉30gを入れて粉っぽさが無くなる程度まで混ぜて2倍に膨らむまで、26〜29℃程度の環境に置く。およそ3〜7時間程度。温度が上がれば時間は短くなり、下がれば長い。例えば野菜室(7℃)の様な環境でもゆっくりと発酵するが(〜12時間)その場合も最初の1〜2時間は適温に置いて酵母菌が活動しやすくすること。
  • 2倍になったら冷蔵庫で8時間以上冷蔵する
  • 冷蔵が終われば上記の種(合計60g)に強力粉60gと水60g(清浄水)を加えて再びよく混ぜ、倍に膨らむまで、26〜29℃程度の環境に置く。およそ2〜5時間程度。温度が上がれば時間は短くなり、下がれば長い。上記同様に野菜室で発酵させても良い。
  • 30℃以上の環境で発酵させると酸味が出ることもあるので注意
  • 2倍になったら冷蔵庫で8時間以上冷蔵する。
  • これで3回分(1回60g使用の場合)の元種が出来ている。120g使って残り60gになったらまた小麦粉60gと水60g(清浄水)を足して繰り返すことが出来る。100g〜120gずつ足しても良い(発酵時間は長くなる)。これを元種の掛け継ぎと称するが、一般的には3回程度までで留めた方が良い。それを超えると何故か2倍に膨らまなくなったり酸味が増したりする。ただしもう一回同じ作業を繰り返すと元種が元気になる可能性が高いが、作業で増えすぎた元種の処理に困る事になりがち。
  • 3回分ある元種でパンを2回焼き、残り1回分を掛け継ぎで増やし、掛け継ぎが3回超えたら液種から作り直す(パンが9回作れる)。このサイクルが一番失敗が少ないのではと考える。
  • ただしバゲットやカンパーニュなど酸味が旨味となるパンが主体であれば、永遠に掛け継ぎを繰り返しても良い。実際ヨーロッパなどでは祖母の代から継ぎ続けている元種が存在し、実に奥深い香りと旨みが堪能出来るとのこと。羨ましい。

元種作りの失敗事例

  • 環境温度と時間厳守。温度は上限29℃が望ましい(酸味が出ることもあるため)
  • 時間が来ても2倍に膨らまない場合は残念だが破棄すること。その元種を使うとほぼ過発酵(異種菌発酵)になる
  • 酸っぱい臭いがしたら少し生地を食べてみる(吐き出してよい)。酸っぱい!と感じた場合は破棄(本来ここで酸味は出ない)。
  • 原因は最初の液種が悪い(酵母が弱い)ためで、液種からのやり直しがオススメ。

③一次発酵

  • ここからは各パンのレシピに従って一次発酵させる
  • ①液種②元種がしっかり出来ていれば、30℃環境でバゲットの場合3時間、食パンで5時間程度で発酵が完了する
  • 目安としては2倍程度に膨らむこと、フィンガーチェックで指穴が開いて戻らないことが役立つ
  • ただし加水率が高いパンではフィンガーチェックは使えない事が多く、2倍程度の膨らみだけで判断すること。
  • しかし時間が来ても2倍にならない場合がある。ここでいたずらに時間をかけると酸味が出て酸っぱいパンになる(バゲットはまだ許容できるが食パンの場合はつらい)ため、見切りをつけて先に進めた方が良い。(各レシピの上限時間に従うこと)

一次発酵の失敗事例

  • 膨らみが悪く時間が来ても1.5倍にもならない場合:元種が悪い。
  • 時間をかけ過ぎてイーストの過発酵の様に生地がしぼんだ場合:
  • いずれも生地を口に入れてみて酸味が弱ければ続行、酸っぱければ破棄(恐ろしいパンになる)

④二次発酵

  • 一次発酵した生地を切り分けて丸めベンチタイムなどを済ませ、最終形状に成形したパンを二次発酵させる
  • 30℃環境で大体1時間程度で一回り大きくなり、生地を側面からそっと押してすぐに戻らない程度が目安
  • 発酵したら設定温度で焼く

二次発酵の失敗事例

  • ほとんど膨らまない。膨らまないので時間をかけると生地の表面に穴が空き始めドロドロ状態。焼き上がりはカチカチ、恐ろしいほど酸味がある失敗パンになる。
  • これが典型的な過発酵(異種菌発酵)の失敗事例。私を含めこの失敗を経験する方が意外に多い
  • 元が悪い(酵母が弱い)事が大抵の原因
  • 何度も失敗を繰り返した結果から得た考察は以下の通り

1. 最初(液種)が悪ければ後工程でのリカバリーは困難、液種作りからやり直すこと

2. 各工程で①発酵温度、②発酵時間、③水(清浄水使用)、④容器消毒を守ってしっかりと発酵させること

液種は泡立ってから+2日間でしっかり育てる

元種、一次発酵は量が2倍になるまでしっかり発酵させる

3. 過発酵(タイムオーバー)厳禁。予定時間を超えたら次に進むこと

*後で色々補足予定